時代との対峙、祈り、そして創造
とても興味深い曲目配置だ。ベートーヴェンに導かれる対照的な2曲。真逆と言っても良い。武満の協奏的作品の独奏に迎えるのは、下野竜也が指揮者として歩み始めて以来共演してきた、デビュー50周年を迎える山崎伸子。輝く音に耳を澄ませ、躍動と鎮静の起伏を感じるうちに、消えゆく最後の1音はさらなる瞑想に誘う。対する「画家マティス」は、煉瓦造りの建造物のよう。論理的だが決して難解ではない。作品は、いつも聴き手に向けて開かれている。
作曲家　吉川 和夫