白鳥はドン引きされ、祭典は劇場大混乱?!チャイコフスキー《白鳥の湖》とストラヴィンスキー《春の祭典》。どちらもバレエ音楽の大傑作ですが、この初演は感動と大喝采・・・ではありませんでした。さて、どっちがどうだったのか?! 真実に迫ります。
ROUND 1 チャイコフスキー《白鳥の湖》
1877年、モスクワのボリショイ劇場。チャイコフスキーが初めて本格的に手がけたバレエ《白鳥の湖》が初演されました。
美しい湖、白鳥に変えられた王女、王子との悲恋。ストーリー的にもウケないわけがない・・・と思いきや、観客の反応はイマイチ。結果として「バレエには複雑すぎる」「交響曲的すぎる」逆に「旋律に乏しい」など、あらゆる評価が降り注ぎました。
さらにバレエの振付や舞台の評判もイマイチだったとか。気になるのが、白鳥の翼。マリインスキー劇場の解説によると、初演の白鳥たちは厚紙の翼を盛んに動かしていたそうです(現代では、コントやパロディでみかけるかも)。
音楽も舞台も、なじみのバレエとはどこか違う…当時の観客には、そんな戸惑いもあったのかもしれません。
しかしながら、白鳥の湖は、その後、約6年間でかなり公演を重ねています。まったくの失敗作ではなかったのでしょう。
ちなみに、私たちが今見る《白鳥の湖》の基礎となった改訂版が初演されたのは、18年後の1895年。プティパとイワノフの振付、ドリーゴの音楽改訂で成功を収め、やがてバレエの代名詞になりました。
ROUND 2 ストラヴィンスキー《春の祭典》
それから36年後の1913年。パリのシャンゼリゼ劇場。
冒頭からファゴットの不思議な旋律、さらに不協和音、予想外のアクセント、次々と変化する拍子。ダンサーは内股になり、膝を曲げ、地面をドンドン。
客席から笑い声や野次が飛び、それに反発する観客も参戦。関係者の回想によれば、その騒ぎでダンサーはオーケストラを聞き取りにくくなってしまいました。
そこで振付家ニジンスキーが、舞台袖から数字を大声でカウント。いわば「今ここ! 次の動き!」と、振付の進行を伝えたのです。
なお、この初演はよく「歴史的大暴動」と呼ばれますが、大規模な殴り合いや警察介入は、後世に誇張された可能性が指摘されています
それでも、劇場が大混乱したことは伝えられています。なじみのバレエとはまるで違う音楽と踊り。その驚きや戸惑いが、観客同士の反発も巻き込み、大騒ぎにつながったのかもしれません。
* * *
チャイコフスキーは、バレエ音楽に交響曲のような厚みとドラマを持ち込みました。
一方、ストラヴィンスキーはニジンスキーとともに、音楽と踊りの両面から「バレエってこういうもの」という常識を揺さぶりました。
初演では戸惑いや酷評を招いた音楽が、100年以上たった今も世界中で鳴り続けています。これが真実。
初演比べとしては、時代の壁を越えた二人の挑戦に拍手しかありません!
主な参考資料・出典
- Mariinsky Theatre, Swan Lake(1877年初演の評価、厚紙製の翼、1895年版)
- Bolshoi Theatre, Swan Lake(初演と上演史)
- Igor Stravinsky『An Autobiography(自伝)』W. W. Norton & Company、1962年版、47ページ(初演時の混乱とニジンスキーのカウントについての回想)
- Sarah Gutsche-Miller, “The Rite of Spring in the Parisian Press,” in Davinia Caddy ed., The Cambridge Companion to The Rite of Spring, Cambridge University Press, 2025, pp. 101–122(初演の新聞報道と「暴動」伝説の検証)
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