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曲名は知らないけれど、なぜか歌える― 日本語になったクラシックたち

2026年8月20日

音楽の授業、実家の柱時計、駅や車内のチャイム。曲名は知らないのに、なぜか口ずさめるメロディがあります。 正体をたどると、名だたるクラシックだったりします。しかも、日本に来てからの歩みがなかなか濃い。唱歌になり、車内放送になり、さらには・・・。今回は、日本語の歌詞をまとい、暮らしに溶け込んだ名曲たちをご紹介します。

Franz Schubert:Heidenröslein, D 257, Op. 3 No. 3(1815)/Heinrich Werner:Heidenröslein(1829)

野ばら

ゲーテの詩に曲をつけたドイツ歌曲です。この詩には、有名な旋律が二つあります。シューベルト版とヴェルナー版です。 日本語詞は、近藤朔風の「童は見たり 野なかの薔薇」。明治42年の歌集『女聲唱歌』に収められたのはヴェルナー版でしたが、シューベルト版も同じ訳詞で広く歌われてきました。 同じ詩、同じ日本語詞、でもメロディは二種類。ちょっと欲張りな曲です。

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Johannes Brahms:Wiegenlied, Op. 49, No. 4(1868)

ブラームスの子守歌

「眠れよ吾子(あこ) 汝(な)をめぐりて」。堀内敬三氏の日本語詞でおなじみの一曲です。 かつての国鉄の特急列車では、一般に「ブラームスの子守歌」と呼ばれる車内チャイムが使われていたとか。車内放送の始まりを知らせ、旅の雰囲気を和らげるための音楽だったのですね。 ただし、このチャイム、おなじみの《子守歌》とは旋律が違うという指摘もあります。

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Franz Schubert:Wiegenlied, D 498, Op. 98 No. 2(1816)

ねむれ ねむれ 母の胸に

シューベルトが19歳だった1816年11月の作品です。日本語詞をつけたのは内藤濯氏。そう、『星の王子さま』を訳したあの人です。 ところで、原詩の2番には「甘い墓の中で眠れ」という、急に闇の深い一節が登場します。日本語詞では、この部分を「母の胸」へ大胆意訳。赤ちゃんもひと安心。

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Antonín Dvořák:Symphony No. 9 in E Minor, Op. 95, B. 178 “From the New World” ― II. Largo

遠き山に日は落ちて(家路)

もともとは歌ではなく、ドヴォルザークの交響曲の一節です。そこへ堀内敬三氏が日本語詞をつけ、「遠き山に日は落ちて」として広く歌われるようになりました。 同じ旋律には、野上彰氏による「家路」バージョン(有名!)があり、宮沢賢治氏の「種山ヶ原」バージョンもあるとか。ひとつの旋律に、日本語の歌詞が複数あるという贅沢さ。 今では夕方の防災無線や、お店の閉店の合図でもおなじみ。この旋律を聞くと、自然に「そろそろ帰らなきゃ」という気分になります。

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Johann Sebastian Bach:Toccata und Fuge in d-Moll, BWV 565

チャラリ~鼻から牛乳

教会に荘厳に鳴り渡るはずのパイプオルガンが、日本では「チャラリ~ 鼻から牛乳」。手がけたのは近藤さんでも堀内さんでもなく、嘉門達夫(現・嘉門タツオ)氏。1992年のことです。 教科書には載らなくても、認知度だけなら今回のラスボスです。

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このほかに、「♪眠れよい子よ~」という通称「モーツァルトの子守歌」(モーツァルトではないそうです)があったり、バッハの小フーガ ト短調で「♪あなたは髪の毛ありますか~」という1999年のコミックソングがあったり。クラシックの名旋律は、礼服を着てコンサートホールに鎮座しているだけではありませんでした。

日本語詞をまとい、教室へ行き、列車に乗り、夕方の町に流れ、ついにはコミックソングにもなる。知らないうちに歌えているなら、その曲はもう私たちの生活のBGMです。